【影山】
「おはようございます、お嬢」

思った通り、朝ごはんを作るのも影山さんなんだね。

【鈴音】
「ごめんなさい、私、こんな時間まで寝ちゃってて。お手伝いしますから!」

【影山】
「とんでもございません」

【鈴音】
「えっ? 何が?」

【影山】
「お嬢はそんなことをなさる必要はありません! 
もうすぐできますから、お座りになってお待ちください」

【鈴音】
「そんなお客様扱いやめてください、影山さん」

【影山】
「お客様ではなく、大切なお嬢ですから……」

【鈴音】
「あははっ。どっちも私のガラじゃないです。お手伝いするつもりで、
ちゃんとエプロンも持ってきたんですよ、ほらっ」

【影山】
「お嬢……」

影山さんが困った顔してたけど、構わずエプロンをして、流しの前に立つ。
手を洗っていると、まな板の上に、おろし金と大根があるのを見つけた。


【鈴音】
「これ、大根おろしにするんですよね?」

【影山】
「そうですが……しかしお嬢……」

【鈴音】
「やだな、そんな心配そうな顔しないでください。ママは仕事が忙しかったから、
食事はだいたい私が作ってたんですよ」

「そりゃあ影山さんみたいな本格的な料理じゃなくて、自己流ですけど。
簡単なおかずくらい作れますから、ね?」

【影山】
「そういうことではなく……困りましたね……」

お手伝いしながら、台所を見回してみる。
お屋敷と同じで古いけど、すみずみまできちんと磨かれて、
手入れの行き届いた台所だった。
どこにも油汚れなんかないし、ふきんも真っ白で気持ちがいい。
片隅には大きな壺があるけど、たぶんぬか漬けが入ってるんじゃないかな。
本当に影山さんって、マメなんだなあ。


【鈴音】
「私、卵焼き作りますね。このお家は、卵焼きに砂糖入れますか?」

【影山】
「ですからお嬢……」

【鈴音】
「入れていいですか?」

【影山】
「……はい。卵5個に対して大さじ2杯ほど……」

【鈴音】
「あ、うちもそのくらいでした! あと、ちょっとだけお醤油たらしますね」

【影山】
「お願いします……」